›2005年 3月 05日

[ 範疇 : 愛しの腐れ芸術 ]

新宿アラーキー街ヌード

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 新宿が好きだ。
 高校時代、栃木の田舎に住んでいながらも月に一度は新宿を訪れていた。
 周囲の同級生たちは受験勉強に励み、休み時間ともなると塾の話題で盛り上がるような進学クラスの最低の青春時代に、塾にも行かず、放課後はゲーセンで遊び惚けては、見回りにやってきた生徒指導教員の目から逃げ続けた私にとっては学校とは、ただ勉強するだけの場所だった。
 それほどまでに勉強して、どうしようというのだろう? 
 そんなこともわからず他人に流されるまま、無駄に浪費していた青春時代。
 しかも男子校という色恋の甘酸っぱい香りも期待できない最悪な環境にあって、ますます私の精神は屈折していったのであろう。吐き気がするほど呪われた青春時代。
 だが、新宿だけは違った。
 今にも崩れそうなほど乾燥しボロボロに荒れた私の心にも、新宿は暖かかった。
 エロス、雑踏、ネオン、BGM、街並、そのすべてが私を暖かく許容してくれた。包んでくれた。

地下鉄へ

 折しも小説家の夢を抱き続けていた私は、当時、夢中になって読んでいた菊地秀行の「魔界都市〈新宿〉」シリーズで舞台とされていた近未来的な新宿をガイドブックとして、現実の1990年代の新宿を彷徨い歩いたりもした。
 東京生まれの人にはわからないだろう。
 寺山修司が書いたという「東京東京東京東京東京東京東京東京東京東京東京東京」という文字に象徴されるように、地方出身者にとって東京とは、まさに危険な魅力に満ちた魔界都市そのものなのだ。
 コギャルという単語が現れる前の時代に生きた私にとっては、新宿こそが東京の中心だった。
 今でも、渋谷はポップカルチャーであり、新宿には未だに文学・芸術の息吹が色濃くへばりついていると確信している。
 
 その芸術とは、綺麗に着飾ったり、お洒落に気取ったりするアートのことではない。
 吐き気を催し、苦悩に身悶えするような生々しい人間の生のことである。
 新宿には昔ながらの日本的な要素と、アジアン、そして西洋的な要素がみごとにチャンプルーされた複合型文化都市なのだ。今でもその魅力は滅びてはいない。
 
 そして、そんな新宿の魔力に取り憑かれた男たちが、また2人。
「森山新宿荒木展」
期間:2005.1/15(土)〜3/21(月)
会場:東京オペラシティアートギャラリー
             (都営新宿線・初台駅)
開館時間:平日12:00〜20:00
     金土12:00〜21:00
休館日:月曜日(最終日を除く)
入場料:一般¥900、学生¥700、ガキ¥500

 天才アラーキーと森山大道という日本でも屈指の写真家が「新宿」をテーマに撮影した膨大な写真が展示される写真展、いわば「1粒で2度美味しい」企画となっている。もちろん、私のように新宿が好きな方から、私のようにアラーキー、森山大道が好きな人まで、あまねく老若男女にお勧めできる展覧会なのだ。

 写真とは、決して「真」を写さない。
 「今」を切り取ることもできない。
 できるのは、外界を素材にして、技術的に作者の想い描くものを表現するだけである。
 いわば、写真はその方法論的にも、コラージュと同種の表現技法なのである。
 
 そして、この写真展において取り上げられている2人の写真家も「写真は表現するもの」だということを怖いくらいに知り抜いている。
 森山大道は、一般的には、ザラザラした荒い質感を特徴とする写真家だと思われているようだ。

森山大道

 その「ブレ、ボケ、アレ」こそは、意図的に表現しなければ出せるものではない。少なくとも、そこらへんの現像屋さんに出したのでは絶対に表現することのできない写真なのだ。
 
 一方の“アラーキー”こと荒木経惟だが、アクリル絵具で彩色を施すような作為的な実験も行っていたり、アートな写真はもちろんのこと、扇情的なヌード写真から猫写真、スナップとしか見えない日付が入った写真まで幅広く、さまざまなスタイルで撮影し、確信犯的に写真を遊び抜いている。
荒木経惟

 そして、もっとも確信犯的なところは、写真集に言葉を載せているところだ。
 
 写真にかぎらず絵画や音楽などの芸術作品が鑑賞者の心を震わせ、感動を生むのは、そこに表現されている「物語」に共感するからである。
 だからこそ、その光景に対して物語を共有することの難しい街角の雑踏写真は、良い写真を撮るのが難しいし、さらに、そこに個性を出すことは想像を絶して難しいのである。
 そこでアラーキーは、自分で物語を語り出してしまった。
 その強烈な個性を武器に、あらゆる写真にアラーキー印を押してしまい、それだけで、後は勝手に鑑賞者が物語を連想するようにしてしまったのである。
 だから、アラーキーの写真には、自分が撮影していないスナップ写真も平気で混ざっている。
 それでいいのだ。
 なぜなら、写真家とは「カメラのシャッターを押す人」ではないからである。 

 そんな表現者たちが「新宿」をモデルに撮影した写真が、文字どおり会場の壁を埋め尽くしている。
 埋め尽くしすぎて、ちょっと上の方の写真とか、マジで見えません(;´Д`)
 でもそれでいいんです。
 圧倒的な量が訪問者に襲いかかってくるのが「新宿」という混沌とした街なのだから。
 
 会場の2階では、今回の写真展のために森山&荒木が新宿の街を歩きまわり撮影した姿が映像で紹介されている。寡黙に微笑を浮かべながら撮影する森山に対して、やたらとしゃべりまくる荒木の姿は、まさに恥ずかしくて照れ隠しのために自分をさらけ出してしまう人の姿そのもの。私も似たような人間ですので、よくわかります(笑)。
 そのほか2人の市販されているDVD作品が上映されるスペースもあり、こちらはゆったり椅子に座って見ることができます。
 ただし、全ての作品の上映時間を合計すると、意外と長時間になるので、お出かけの際には、多少ゆとりを持っておくことをオススメします。
 
 また、オペラシティ地下には手塚治虫グッズを扱う「手塚治虫ワールト・エンターテイメント・スクエア」というショップもある。
 「三つ目が通る」や「ワンダー・スリー」など手塚作品の様々なグッズが所狭しと並べられている。
 写真展帰りに訪れてみても面白いだろう。

 なお、森山大道だが、私はつねづね「キレイな写真を撮る人」だと思っていた。
 そして、それを他人に言うと、いつも「えー? 汚いよ」という返事が返ってきた。
 …バカタレ。
 私の言う「キレイ」ってのは、美的基準についてであって、画像が整っているとか、像がクリアだとか、そんなことはどうだってよろしい!
 森山大道の写真は絵画的、映像的に極めて美を意識されている。
 だから「キレイな写真」のだ。…私にとっては。
 
 そして、意識的に美を求めて作成された作品は、私はあまり好きではない。
 どうしても気取った芸術家風なイメージを抱いてしまう。
 それは、まるで「ジャズが好きです」と語る若者を見るかのような嫌悪感なのである。
 …いや、オイラもジャズは嫌いじゃないけど(;´Д`)
 芸術など、わざわざ「する」ものではない。
 人間は生きていることが、まずは奇跡的であり、もっとも美しいアートなのだ。

 やはり、アラーキーの混沌として暴力的なまでの生命力を感じさせる写真の方が好きだ。
 
 アラーキーは「エロティック」と言われる。
 ヌード写真が多いのは事実だが、むしろ着衣写真の方がエロティックだったりすることも多い。
 エロティックな要素もあるが、私はそればかりだとは思わない。
 私がアラーキーの写真に感じるのは、あくまでも純粋ななのだ。
 街を愛し、人を愛し、猫を愛する。
 それはセックスする欲望も含めて、ごっちゃまぜになりながら外へと放射されて続けている。
 だからこそ、アラーキーの写真はヌードであっても美しい。
 汚いカラオケバーのスナップ写真でも美しいのである。
  
 そして、私には妻・荒木陽子さんへの愛情が切なくなるほど感じられてしまう。
 彼女を撮るアラーキーの写真は、美的にはイマイチなものも多いが、どれもこれもが美しく輝いている。その背景には、アラーキーの語る物語と、そして強烈なまでの陽子さんへの愛がある。
 だから美しいのだ。
 
 この写真展以来、私も妻を撮る機会が増えた。

 今回、展示されている写真があまりに膨大であり、しかも見えない高さまで展示されているので(笑)、私としては写真展の図録を購入することをオススメする。
 いわば過去の発表作品がある程度まとめられた「おいしい」一冊になっている。


「森山 新宿 荒木」
価格: ¥3,675 (税込)

 決して高い買い物ではない。…重いけど(;´Д`)…通販がオススメ。

 
 ちなみに芸術の感動の要素が「物語」と私は主張していることについて一言。
 たとえば芸術論でも古典とされるカントの『判断力批判』において違う説明がされていたりするが、それはまた別の問題。私も無視しているわけではなく、あくまで作用が違うだけだと思っている。
 そのうち論じてみませうか(´ー`)y-~~ 得意分野だしぃ。
 
 そういえば、アラーキーは大学の先輩なんだよねヽ(´ー`)ノ学部は違うけど。

アラーキー

 
 以下、リンク集。
 ■荒木経惟 公式ウェブサイト
 ■クラカメ堂:荒木経惟特集
 そして現在、渋谷ライズエックスで公開中、天才アラーキーを題材としたドキュメンタリー映画。ビョークも出てます。
 ■アラキメンタリ
 
 ■森山大道 公式ウェブサイト
 
錦糸町

 そして、将来、有望な写真家たちのサイト。
 良い写真、あります。
 ■ATOMU WORLD:以前の職場の同僚さん。活動的なスタイルがGood!
 ■Fantastic Camera Gallary:今日の一枚:街角写真が良い。ロシアカメラの含蓄。
 ■TWO HEART:Pix*Tex:加工された街角写真が印象深い。
 
 …えっと(;´Д`)ブックマコの整理が中途半端なので、この続きは別の機会にでも。…アディオス!!1(汗)

Comments

書き忘れたけど、冒頭の地下鉄エスカレーターと最後のオレンジタクシーの写真はオイラ撮影のものです。
誤解なされないように(´ー`)y-~~
まあ、写真にカーソルを合わせると著作情報が表示されるようにはしてあるんで、見てみてみてみて味噌。
 
あと余談だが、コメント書いてもらった時にURLが表示されるようにしました。
で、メアドは絶対に表示されないようにしました。これで安心!

Posted by: 管理人 [URL] at 2005年03月06日 21:38

?うちのサイト(っていっても日記だけど・・・)に遊びにきてくれてありがとうございます。かきこみもあいりがとうございます!!うれしいです。
 アラーキー展は今週行きますよ!すごく早くみにいきたいです!楽しみです!この前現代美術館にいきまして、『愛と孤独、そして笑い』と『Enokura Koji』展示を見ました。どちらもおすすめです!おもしろかったですよ。今度ATOMU WORLDにも書こうと思ってます。なんか行った日に書こうと思うのだが、なんか自分は時間たってから書きはじめたいタイプみたい・・・(笑)
早く作ったホームページをやりたいのだが・・・なかなか進まない(>ー<)スペースを借りないと・・・

Posted by: yumi nakayama at 2005年03月08日 00:19
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